ヒートポンプは本当に自然エネルギーか?

金子憲治(日経エコロジー副編集長)

太陽光や風力を阻害する懸念
政府は今国会で地球温暖化対策基本法の成立を目指している。同法は、温暖化対策の大方針を示す理念法であるが、数値目標や具体的な政策を明記することで、今後の方向性を確定させる狙いもある。

既に日本政府が国際的に表明した「2020年に温暖化ガスを25%削減」という中期目標は、条件(主要国が公平で意欲的な削減目標を掲げること)付きで盛り込む方向になってきた。残る争点は、再生可能エネルギーの2020年までの導入目標、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度、排出量取引制度の骨格をどこまで明記するか――などだ。

民主党は、「一次エネルギーに占める再生可能エネルギーの割合を2020年までに10%にする」との目標を掲げるが、小沢鋭仁環境大臣などはさらに上積みしたい意向を示している。

引き上げに難色を示す電力業界との駆け引きのなかで浮上しているのが、目標を引き上げつつ「ヒートポンプによる熱」を再生可能エネルギーに含めるという考え方だ。

実は、自民党が政権政党であった2009年に議員立法で起草した低炭素社会基本法では、2020年の再生可能エネルギー導入目標を20%とし、ヒートポンプによる熱を含めていた。2009年8月に閣議決定されたエネルギー供給構造高度化法の政令において、「ヒートポンプで利用する空気熱」が再生可能エネルギーとして定義されていた。

政権交代まではヒートポンプによる熱利用を再生可能エネルギーとして推進する流れが着実にできていたのだ。新政権で途切れたこの流れを、ここにきて復活させようとの動きがある。

ただ、ヒートポンプによる熱を再生可能エネルギーに含めることには、一部の環境NGO(非政府組織)などから異論があった。ヒートポンプが効率の高い省エネ技術の1つであることは事実だが、それを「再生可能エネルギー」と位置づけて導入目標の達成に使うと、太陽光や風力、バイオマス(生物資源)、地熱発電など、本来の再生可能エネルギーの後押しを阻害することになりかねない。

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