諫早湾問題

諫早湾(いさはやわん)は、有明海の中央部西岸からさらに南西側に入りこんだ湾


を指す呼称です。泉水海とも呼ばれます。

遠浅の干潟を利用して、古くより干拓が行われてきましたが、1989年より着工した


国営諫早湾干拓事業が、有明海全体を含んだ環境保全上の争点となっています。

湾奥部の潮間帯には泥干潟が広がり、泥質部を好むシチメンソウ(ミルマツナ)、


ウミマイマイ、ハイガイ、タイラギ、カキ、アゲマキ、ハラグクレチゴガニ、アリアケガニ、


シオマネキ、ムツゴロウなどの生物が生息していました。

1989年からは国営諫早湾干拓事業が開始され、1997年には諫早市と雲仙市に跨


約35km²の海域が締め切られました。

それにより、かつては「宝の海」と言われた有明海に海底への泥の沈殿、水質汚染


生じて有明海全体が死の海と化し、二枚貝タイラギが死滅、奇形魚の増加、海苔


の色落ちなど重大な漁業被害が発生したとして、自然保護団体のみならず、沿岸の


各漁業協同組合の猛反対にあっています。

締め切られた堤防内は干潟の乾燥化と調整池内の淡水化が進み、干潟の生物が


徐々死滅した一方、二枚貝の一種であるヒラタヌマコダキガイが激増するなどの変


化が見られました。

水質も汚染が進み周辺では悪臭を感じることもあり、その汚水が排出されることによ


って有明海全体が汚染されようとしている、という指摘もあります。

また、工事に使用する海砂を有明海中央部海底より採取しましたが、締め切り直後


1997年にはその有明海中央部で貧酸素水塊が発生したことが報告されています。

潮受け堤防の締め切りから約10年後の2007年11月20日に完工式が行われ、

翌12月22日午後5時、潮受け堤防の上に全長8.5kmの諫早湾干拓堤防道路が開通


しました。

2008年6月27日、佐賀地方裁判所は干拓事業と漁業被害と関連を問う裁判で漁業


害との関連を一部認め、潮受け堤防排水門について5年間の開放を行うよう命じ


る判決を言い渡しました。


公共事業に対しノーを突きつけたものでした。

これに対して国側は控訴し、未だ水門は開門されていないが、赤松広隆農相は、潮


堤防排水門の開門調査に向けた環境アセスメントの結果を待たずに、開門する


可能性について「あり得る」と述べています。

2010年12月6日、福岡高等裁判所は佐賀地裁の一審判決を支持し、「5年間の潮受


防排水門開放」を国側に命じる判決を下しました。

2010年12月15日、菅直人内閣総理大臣は、福岡高等裁判所の判決について上告


を断すると表明しました。

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