ホンダなど 燃費と走り両立

「若者のクルマ離れ」で影が薄くなっていた“スポーツカー”に再び脚光があたり始めた。ホンダが2月に市場投入した世界初のハイブリッドスポーツカー「CR-Z」の売れ行きが好調。トヨタ自動車はスポーツEV(電気自動車)の米ベンチャー企業テスラ・モーターズと提携した。

 そして、現在のエコカーへの追い風も、スポーツカーには“逆風”だ。各国が相次ぎ排ガス規制を強化し、燃費性能に劣るスポーツカーの旗色は悪い。国内では今年9月から、排ガスの測定方法が変わる。これを受けてホンダは4ドアセダンのスポーツカー「シビック タイプR」の生産を8月末で終える。マツダも、来年から欧州で新規制「ユーロ5」が導入されることを受けて、「RX-8」の欧州での販売をやめる。日米では販売を続けるが、広島市の本社工場での欧州向けモデルの生産を6月で打ち切る方針だ。

 そこで、ホンダはCR-Zの開発で新たなスポーツカーのあり方を追求。デザインを担当した本田技術研究所四輪R&Dセンターの名倉隆主任研究員は「従来はエンジンのパワーを上げることにこだわる余り、車体が重く、価格が高くなり、一部の愛好者だけのものになっていた」と指摘する。CR-Zについては「軽量化し、ハイブリッドシステムを使うことで燃費も良くする。人の生活に寄り添う新しいスポーツカーにすることを心がけた」と振り返る。

 環境性能の高いスポーツカー。それまでの逆風を追い風に変えたのがCR-Zの発想だ。ホンダの伊東孝紳社長は「買っていただけないのはわれわれの努力が足りないから。いろいろなチャレンジをして市場の活性化をはかる」と、CR-Z開発に込めた思いを語る。この試みが、発売後1カ月で1万台を受注するスポーツカーとしては異例のヒットにつながった。

 新たな発想のスポーツカーで市場に刺激を与えようとするのはホンダだけではない。
 トヨタ自動車の豊田章男社長は20日(現地時間)、米カリフォルニア州のテスラ本社で開いた資本・業務提携記者会見で、同社の開発したEVスポーツカーを絶賛した。

 テスラが2012年に発売予定のEVスポーツセダン「モデルS」(5人乗り)は、わずか45分の充電で約500キロの走行が可能。燃費はプリウスを大幅に上回るが、時速100キロへの加速が約6秒とスポーツカーとして十分の走行性能だ。

 両社が共同開発する自動車の概要は未定だが、テスラの技術を取り込んだEVスポーツとなる可能性は高い。

 自らもプロレーサーである豊田社長は、スポーツカー開発に注力。すでに高出力と環境性能の両立を目指した小型FR(後輪駆動)スポーツカー「FT-86コンセプト」を富士重工業と共同開発しているほか、高性能スポーツカー「レクサスLF-A」も10年末に限定発売する。

 豊田社長は5月11日に開いた決算発表会見で、「走りの味や車の楽しさにこだわった、お客さまにワクワクしていただける車を提供していきたい」と強調。テスラとの提携で、トヨタによる新次元のスポーツカー開発が加速しそうだ。

 一方、欧州では、スーパーカーの代名詞的な存在であるフェラーリとポルシェが、今年3月のジュネーブモーターショーで、そろってHVスーパーカーの試作車を披露した。プリウスと同等の燃費で時速300キロ超を出す“肉食系”HVだ。

 実際に発売される時期は未定だが、スポーツカーが環境性能に劣る、実用性に欠けるというイメージが完全に払拭(ふっしょく)されるのは、そんな遠い将来のことではなさそうだ。
 メーカーは若者や子供を対象に、あの手この手で自動車への関心を高めようとする取り組みをしている。

 根強いファンの多いモータースポーツだが、金融危機を受けてホンダとトヨタ自動車が相次いで最高峰のF1(フォーミュラ・ワン)から撤退。トヨタは今年のモータースポーツ支援計画で、「走る楽しさを体感できる機会を提供する」として、一般のドライバーが参加できるイベントやレース開催に力を入れる方針を示している。

 例えば、3月に富士スピードウェイ(静岡県)で開催されたファン感謝祭では、エコドライブを競う「ハイブリッド チャレンジ」を開催。ハイブリッド車「プリウス」の所有者らが参加して燃費の良さを競った。

 ホンダも1981年から、1リットルの燃料で何キロ走行できるかを競うレースを開催。30回目の今回から名称を「エコ マイレッジ チャレンジ」と改め、多くの参加者を募る。

 日産自動車は随時、横浜市の本社ギャラリーで、「SUPER GT」のレースの模様を生放送するパブリックビューイングを開催している。また、同社は小学校で、児童が事前に描いた車の絵をもとにカーデザイナーがスケッチ作業のデモンストレーションを行う「デザインわくわくスタジオ」などの出張事業を社会貢献活動の一環として実施している。

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